バーチャル ノベル 『白園のシャーロット』

バーチャル ノベル 『白園のシャーロット』
第一輪『天を仰ぐ少女』

何かを得るためには同等の代価が必要になる。
あるいは同等の代償を差し出す必要がある。

それが到底釣り合わない、自分が本来欲していたものが代償になっても、
人は手にできる”結果”という、その魔力に魅入られてしまって愚かにも手を伸ばしてしまう。

そう……あの時あの場所で、
あのアバターに出会ってしまった時の私も、そんな愚かな人たちと同じく、その魅力に抗えず手を出すものの一人になってしまった。

この話はそんな私と、”彼女”と過ごした一年の物語。
決して特別ではない、けれども唯一無二のお話。

さしあたって、こう始めるとしよう。

この話はきっといつか、あなたの元にも訪れることになる話かもしれない、と――


辺り一面白一色に染められた世界。
中央に大きな通り道を作る形で両側に配置された長椅子たち。
入り口から奥にかけて、等間隔に並べられ、その最奥には大きなステンドグラスから差し込む光に照らされた空間。

(まるで教会みたい……)

最初にそこを見た時に思った感想はそれだった。

”まるで”と言葉を頭につけたのはここが現実の世界ではないからだ。
バーチャルワールド『New world 4.0』……それがいま私が見ている、この世界の名前である。
当時最先端の技術だったバーチャルリアリティの世界を楽しむゲームで、PC端末さえあれば誰でも無料で参加できる――そんな触れ込みがヒットし、幾度のアップデートを経た今ではこちらの世界で過ごす時間の方が多いという人が出てくるくらいに人々の生活に浸透していた。

そのため、咄嗟に”まるで”という言葉が出てきたのだ。
しかし、そう思ったのはそれだけが理由ではない。
ここに与えられている役目が教会のそれではないことが明らかだったからだ。

(これって……)

床一面に敷き詰められた花たち。
その奥で壮大な存在感を示す煌びやかなステンドグラス。
そしてをそれ見上げるように佇む少女に、その隣に浮かぶ少女の姿を映した四角い映像。

ペデスタル――このバーチャルワールドを始める際に作成する自分の分身であるアバターのデータが入っているボックスがそこに存在していた。

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