バーチャル ノベル 『白園のシャーロット』

バーチャル ノベル 『白園のシャーロット』
第二輪『幸せの美少女アバター』

それは時に都市伝説として、
またある時は恐怖心を煽る怪談として、
あるいは恋する者たちを応援する噂話として語り継がれていたものだった。

『幸せの美少女アバター』

適当に聞いていた話の断片を拾い集めるために記憶を辿る。
……確かこんな話だった。




このバーチャルワールド『New world 4.0』をプレイしていると、突然他のプレイルームーーインスタンスへの招待が来る。
招待の送り主は『 』と、本来入力できない空白文字のみで、その招待を受けると女の子のアバターが置かれているワールドインスタンスに移動させられる。

教会のような作りの建物。
床を埋め尽くす白い花。
そして、その最奥に佇む少女とそのペデスタル。




その少女のアバターはどのアバターモデルにも属さない、完全オリジナルのアバターは思わず息をのむほどの完成度と美しさを兼ね備えており、そのアバターをした者は想い人と添い遂げることができる、と――




(――たしか続きがあったと思うけど……)

思い出そうとしたけどその先が思い出せない。
断片となる情報もほとんどなく、悪い話が続きにあることくらいしかわからなかった。

(…………綺麗――)

ステンドグラスを見上げ、微動もしない少女を眺め、改めて思う。

動くたびにふわりと揺れ動きそうな長い髪。
一切の穢れを感じさせない、白磁のように白い肌。
見るものの視線を捉え、離そうとしない透き通った瞳。
そして胸やおしり、二の腕やおなか――全体として細身でありながらも、見るものに程よい質感を覚えさせそうな体つき。

そのどれもが、出会った者を惹きつけそうなものばかりだった。

「…………」

所詮は噂話――そう思っていただけに、今目の前に映る光景に言葉が出なかった。
数多の想い人を振り向かせてきた少女がここにいる……その現実に私は戸惑っていた。

(この子があれば……)

……あの人と一緒になれる。
毎日たくさんの人に囲まれている人気者なあの人の視線を惹き、
ニコッと無邪気に笑うあの人とおしゃべりを楽しみ、
二人だけの時に見せる、ニヤッと悪戯っぽく笑うその顔を私だけのものにできる。

「…………」

そんな甘い声の囁きに、
私は抗うことを忘れ、
その手を伸ばしていた。

目の前にある"箱"に。

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